2015年7月アーカイブ

住宅ローンにおける抵当権設定

台風11号が通り過ぎ、ようやく雨が

止んできた京都ですが、本当に昨日

から今日にかけて雨がよく降りました。

賀茂川も激流になっていて、かなり恐ろしい

風景になっております。

 

皆様がマイホームを購入される際に、金融機関

の住宅ローンをご利用されるかと思います。

その際、購入不動産の所有権を取得するのと

同時に「抵当権」設定登記が必ずされます。

 

御存知の通り、金融機関は融資を行いその被担保

債権を保全するために抵当権を設定するのですが

、登記簿の抵当権の原因の箇所をご覧いただくと

「平成年月日保証委託契約による求償債権平成

年月日設定」と登記されていることがほとんどだと

思います。

 

そもそも保証委託契約は何かと申しますと、簡単に

記してみます。

(仮定)

債権者 A銀行

債務者 B(⇒皆様です)

保証人 C保証サービス株式会社

 

Bが住宅を購入したいのでAに融資の申込を行い

、Aの事前審査で承認がおりたらAはBに貸付を

行う訳ですが、BがCに対し保証人になってください

と依頼(委託)し、Cがこれを承諾したときは、BとC

の間で保証委託契約が成立することになります。

つまり、AとBはお金の貸し借りに関する金銭消費

貸借の関係でしかない訳です。

 

抵当権を設定するのはCになる訳ですが、Cは何を

被担保債権として抵当権設定するかというと、原因

の後段にある「求償債権」を担保するため登記を行い

ます。

この求償債権とは、BはAに対して融資を受ける際に

決めた約定に基づいて毎月返済をしていく訳ですが

、その返済が滞った場合にBは期限の利益を喪失し

て全額を返済する義務が生じます。その際、CはA

に対して代わりに返済を行います(代位弁済)。

CはBのため肩代わりした訳ですから、その肩代わり

した金額を請求でき、これを求償権といいます。

 

抵当権の被担保債権は今現在その債権が具体化

していなくても、将来発生する可能性がある債権

についても登記上問題はありません。

よって、Cは将来もしかしたら発生するかもしれない

債権について抵当権を設定していることになります。

以上における保証委託をお願いするに際して、皆様

は銀行指定の保証会社に保証料を支払われていま

す(将来の金利に上乗せするケースもあります)。

 

過去の質疑応答では、契約条項によって登記原因は

①「保証料債権と求償権とを担保する」旨の定め

⇒ 「年月日保証委託契約年月日設定」

  (登記研究385.79)

②「求償債権その他一切の債権を担保する」旨の定め

⇒「年月日保証委託契約年月日設定」

 (登記研究411・85)

③「求償債権を担保する」旨の定め

⇒「年月日保証委託契約による求償債権年月日設定」

(昭和48、11、1民三8118・登記研究385・79)

と、されております。

 

最近は融資実行段階で保証料を全額支払ケースが

ほとんどですので、③の登記事項が多いことに

なっています。

 

   司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志

 

 

社外取締役等の登記

3月決算の企業様の定時総会も終わり、私共が

依頼をいただく商業登記も、終盤に差し掛かって

参りました。

大企業の株主総会は、会社法をはじめその周辺

法令や規則の改正に伴い、例年とは違った内容

になった所もあるみたいです。

 

 

その会社法の改正に関連しますが、「社外取締役等」

の登記も取扱いが変更になりました。

登記研究807号75項で神崎満治郎氏の論考にも紹介

されておりましたので、少し触れておきたいと思います。

 

改正会社法2条15号及び16号で社外取締役や社外

監査役(以下、「社外取締役等」とします)の定義が

変更になりました。

今日は、その要件のご紹介は割愛しますが、以前より

も、社外性に対する適用要件が厳格になったと言えます。

 

まず改正会社法附則4条で、「平成27年5月1日に現に

社外取締役等を置いている会社は、施行後最初に終了

する事業年度に関する定時株主総会の終結後に、改正

後の社外取締役等の要件を適用する」としています。

 

よって、社外取締役等を置いていた会社で3月決算の

会社は今年の定時株主総会終結の時点では、上記の

定めにより、未だ社外性の適用要件は従前のとおり

となりますので、今年の5月1日以降に定時総会で

選任される社外取締役等は改正前の社外性を適用

してもよい訳であります。

 

では、この社外取締役等を「社外」取締役や監査役

として、登記してもよいのでしょうか。

監査役会設置会社であれば、社外監査役として再任や

就任の登記を行うケースはよくありますが、社外取締役

の登記はほとんどの会社は改正前会社法427条の責任

限定契約にかかる社外取締役という理由で、「社外」取締役

で登記されている事例が多かった印象です。

 

改正後社外取締役等を登記する場合は以下に、変更に

なりました(改正会社法911条3項)。

①監査役会設置会社の社外監査役

②監査等委員会設置会社の社外取締役

③特別取締役による議決の定めがある場合の社外取締役

④指名委員会等設置会社の社外取締役

 

よって、改正会社法427条に従い社外取締役等として登記

されている役員の方も、改正後はその「社外取締役である旨」

や「社外監査役である旨」の登記を抹消する必要があります

が、改正会社法附則22条2項で当該役員の任期中の間は

その抹消登記をする必要がないとされています。

 

大企業及びその子会社は、定款の定めで任期を1年に短縮

している会社が多いため、今年の定時総会で社外取締役と

して再任されても、上記のような理由で登記する際は「社外

取締役である旨」を外して重任による登記申請を行いました。

 

会社法が改正されて少し経ちましたが、現在の所登記実務で

はそんなに多くの混乱が生じていないかなと感じています。

 

 

       司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志