昨日は大手企業の決算の発表がありました。
ほとんどの企業がアベノミクスの影響もあり、増収増益と
なっていましたが、この影響が消費者の購買意欲などを
持続的に刺激するのかは、以前不透明のような気がしています。
今日は、銀行預金の相続についてのお話です。
相続手続のご依頼をいただく際、亡くなられた方名義の銀行預金が凍結
されて、そのまま放置されているといったお話をよく聞きます。
銀行預金は可分債権とされていますので、被相続人の死亡によって法律
上当然に分割され、共同相続人は、その相続分に応じて預金債権を承継
することになり、各自相続分に応じた払戻請求ができます。
過去の判例も上記の立場をとっています(最判昭29.4.8等)。
では、実際の所被相続人が1000万円の預金を残して死亡し、相続人が2人
残された場合、それぞれ銀行に対し500万円の払戻ができるでしょうか。
法律的建前は前記のとおりですが、銀行は相続人の範囲や相続分が確定的に
判明しないと、超過支払や相続人間のトラブルに巻き込まれるため、銀行所定の
払戻請求書に相続人全員の実印を押印させ、相続人全員の印鑑証明書と相続
関係が判明する戸籍謄本等を添付がある場合や、遺産分割協議書、遺産分割調
停証書等が具備されて、初めて払戻請求に応じているのが実情のようです。
しかし、相続人からの払戻にかかる訴訟が提起された場合は、判例自体が変更
されていない以上、各自に払戻請求が認められる可能性が高いといえます。
下級審ですが、銀行が主張する相続開始後遺産分割協議成立前においては、銀行
共同相続人全員の同意に基づきその全員に対して一括して預金の払戻を行うという
事実たる慣習の存在は認められないとした判例もあります(東京地平18.7.14)。
多額の預金が残されており相続人間で揉めているケースは別として、訴訟手続まで
とるコストを考えると、銀行の実務姿勢に従う方が圧倒的に多いと思われます。
銀行側からすると一部の者に対して払戻に応じた場合、他の相続人からのクレームが
入るのは目に見えておりますから、銀行の気持ちも分かる気がしますが。
司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志