昨日、毎月定期購読していた雑誌が出版元会社の破綻により
廃刊になったというニュースをネットで知り、とてもショックでした。
一昔前までは、新聞や雑誌等で知りたい情報を得るのが一般的
でしたが、現代はインターネットをはじめ様々なツールで情報を取得
できる時代ですから、そんな要因も関係しているのかなと少し寂しく
なりました。
今日は相続登記における添付書面のお話です。
現在の不動産登記法では相続により権利移転登記を申請する場合には
添付書面として「登記原因を証する情報」として、①相続を証する市町村長
その他の公務員が職務上作成した情報、及び②その他の登記原因を証する
情報とされています(不動産登記令別表22項)。
①は、各役所発行の戸籍・除籍謄本等であったり、家裁の書記官は作成した
相続放棄申述受理証明書(相続放棄したことの証明です)や、遺産分割の審判
書、調停証書の謄本等があります。②は、被相続人作成の遺言書、遺産分割
協議書、寄与分を定める協議書等が典型です。
法務局が上記書面が「登記原因を証する情報」として添付され申請があった場合に
特に注意して審査するのは
Ⅰ 戸籍・除籍謄本等の情報について、相続の開始時期がいつか
Ⅱ すべての相続人を明らかにするに足る情報が添付されているか
Ⅲ 自筆証書遺言については、検認の手続がされているか
Ⅳ 遺産分割協議書については、協議に参加する資格がある相続等の全員が参加
しているか
の、事項になります(不動産登記実務研究会 編著「権利に関する登記の実務Ⅲ 第2編」)。
Ⅰは、相続開始時期によって適用される法令つまり民法が異なるためその特定が重要に
なります。民法は明治時代に制定されていますが、現在にいたるまで何度か改正をしてい
るため、法律で決められる相続人が異なったり、法定持分割合が違ったりします。
Ⅱは、戸籍謄本等により法律で規定されている相続人全員が特定され、その者達が適正な
方式により権利を取得しているかどうかを判断します。
Ⅲは、自筆証書遺言は民法1004条1項で家庭裁判所の検認を受けなければならないとされ
ていますので、登記実務においても、検認手続を経ていないものは遺言書として認めてくれま
せん(平成7.12.4民三4344通知)。
Ⅳは遺産分割協議書の当事者として法定の権利を有し、またその関係に利益相反関係が認め
られる時は特別代理人の選任があるか等が審査されることになります。
上記の審査基準を踏まえて、過去の質疑応答では
『「相続人中の1名であるAに相続させる」との文言のある遺言書を添付して相続登記申請する
場合、相続証明情報は被相続人の死亡の事実及びAが相続人であること明らかになるもので
足りる」(登記研究386号)』
『「甲土地を弟Aに相続させる」旨の遺言書を添付して相続登記申請する場合、相続証明情報
は被相続人の死亡の事実及びAが遺言書の弟であることを称する戸籍謄本ほか、他に先順位
の相続人が存在しないことを証する除籍謄本等を添付すべきである(登記研究205号)』
が、あります。
前者はAが相続人であることが判明する以上は、それ以上の情報を求めないという趣旨で
しょう。後者は、所有権移転登記原因を「相続」とする以上は、弟Aが法定の相続人である
ことを証明しなければならないという解釈に立っていると考えられます。
司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志