いつの間にか、年が明け2012年がスタートしました。
今年も司法書士法人高山事務所を宜しくお願いいたします。
私は昨年末から体調を崩し、新年になってもあまり体調が芳しくない日が続き、
ついには最近インフルエンザに感染してしまうという、情けない失態をしてしまい
ましたが、現在は元気になり日々の業務をさせていただいております。
日本全国流行しているみたいですね、インフル野郎は…。
さてさて、本日は会社法174条「相続人等に対する株式売渡請求規定」について考えてみます。
(例)
株式会社甲(非公開会社)
保有株式割合 代表取締役A 80%
B(Aの弟) 15%
その他 5%
・代表取締役Aが突然亡くなりました。
・会社の経営については、Aの長男であるCが引き継ぎ代表取締役に就任。
・Aの所有していたい株式会社甲株式はCが相続。
・弟Bは以前は会社の経営に加わっていたが、Aとの確執により現在は会社の経営には
参加していない状況。
以上のお話を前提に、Aが亡くなったことをきかっけにBが会社の経営に参加したいと考えたとします。
しかし、Bの株式保有数でみると会社への発言権はほぼ皆無に等しい状況です。
こんな時に会社の定款に会社法174条規定があると、その規定が裏目に出てしまうケースに発展します。
株主の地位というのは相続によって自然発生的に相続人に承継されてしまいます。
相続により会社にとってとんでもない株主が現れることを防止するために、定款に定めることを条件に
相続等によって取得された株式(譲渡制限株式に限る)を売渡請求できるようにしたのが、会社法174条の立法趣旨です。
これにより、相続等により株式の分散を防止できる期待ができます。
ただ、相続等によって取得されて株式の売渡請求の決定を行う株主総会では、株式の売渡請求の対象となる株主は議決権を
行使できません(会社法175条2項)。
上記のケースでは、Cは売渡請求の決定にかかる決議には議決権を行使できないことになります。
つまり、Bがほぼ自己的な議決権行使によってCが相続によって取得した株式が売渡の対象になって
しまい、いわば会社の乗っ取りが生じる訳です。
勿論、売渡請求するにしても、分配可能限度額を超えて買取してはいけない財源規制(会社法461条1項5号)もありますし、
買取可能な資金調達等の点もクリアはしなければなりません。
売渡請求も期間制限はあるものの(会社法176条1項)、Cにとって何か対処すべき方法はないでしょうか。
Cは大多数の株式を保有しているので、この定款の定め自体を廃止してしまうことも考えられます。
当該定款の定めを廃止する議案を、言わば強行的に株主総会で決議しても、Bないしその利害関係人から
株主総会決議取消の訴え(会社法831条)をおこされるリスクがあるのではないかと、個人的には考えています。
Cが対抗出来る方法は、現在の会社法及び判例を見渡しても、なかなか難しい状況だと感じます。
となると、Aは生前に事業承継によりCに早い段階で株式を譲渡しておくとか、持株会社を設立してAの株式の一部を
その会社に保有させるとか、やっておいた方が得策ということになります。
私もほとんど勉強をしていない輩ではございますが、この論点に関して正面から判断した裁判例はいまだ発出されて
いないと認識しています。
会社法の施行に応じて、定款の定めを一新された会社は多いとは思いますが、今一度自分の会社の実情を踏まえて
定款を見直すのも良いのではないでしょうか。